確率や統計に関する場面でよく使われる「多項係数」を簡単に計算できるのが、MULTINOMIAL関数です。
この記事では、MULTINOMIAL関数の基本的な使い方と、実際の数学的背景や活用シーンをわかりやすく紹介します。
MULTINOMIAL関数とは?
MULTINOMIAL関数は、複数の数値から多項係数(多項式の係数)を求めるExcel関数です。
この多項係数は、高校数学IIで学ぶ「多項定理」の中で登場し、確率や統計の場面でよく使われます。
関数を使えば、複雑な階乗の計算も一発で求められるため、実務や学習の両面で非常に便利です。
(n1 + n2 + ... + nk)! / (n1! × n2! × ... × nk!)
これは、複数のグループへの分類方法の数を表す場合などに利用されます。
書式
=MULTINOMIAL(数値1, 数値2, ..., 数値n)
引数 | 説明 |
---|---|
数値1〜n | 自然数(0以上の整数)を1つ以上指定 |
使用例:赤3回・青2回・黄1回が出る組み合わせを計算する
例えば、次のような状況を考えます。
- 1回ずつボールを取り出す(合計6回)
- 各回の選択肢は「赤」「青」「黄」
- 結果として「赤3回・青2回・黄1回」出た場合、それが何通りの順番で起こり得るか?
これは 「重複順列の並び順」=多項係数 の問題です。
この問題は次の式で表せます:

- 全体:6回の並び順(6!)
- 同じ色:赤3回、青2回、黄1回で重複を割る
Excelでの解法(MULTINOMIAL関数)
=MULTINOMIAL(3, 2, 1) → 60
つまり、「赤3回・青2回・黄1回」が出る並び方は全部で 60通り あるということです。
活用シーン
- 多項定理に基づく項数の係数計算(x, y, zの乗数の係数)
- マルチクラス分類問題における組み合わせの数
- ボールを複数の箱に分ける方法の数(順序を考慮しない)
- 順列のグループ分け付きバージョン
注意点
- 引数はすべて 0 以上の整数でなければならない
- 小数を指定すると 自動的に整数に切り捨てられる
- 負の値や文字列を含めると
#NUM!
や#VALUE!
エラーになる - 結果は常に 正の整数
関連関数との比較
関数 | 目的 | 特徴 |
---|---|---|
PERMUT | 順列(並び方) | 順番を考慮、繰り返しなし |
COMBIN | 組み合わせ | 順番を考慮しない |
MULTINOMIAL | 多項係数(複数グループ) | 各グループの要素数を使う |
FACT | 階乗(n!) | 組み合わせや順列の構成に使用 |
まとめ
- MULTINOMIAL関数は、複数の自然数に基づく多項係数を求めるための関数
- 統計や確率計算、グループ分類の数などに応用できる
- 順列・組み合わせの発展形として使いこなすと分析の幅が広がる